島崎藤村「夜明け前」を読む(ネタバレ) 統合失調症か認知症か?

島崎藤村労働衛生一般

島崎藤村「夜明け前」を読了した。かなりの大部(700ページ)なので大変だったが、読むほどに「幕末の木曽路の世界」に引き込まれていった。さすがに文豪と言われるだけあるなと感じた。

もともと「夜明け前」を読もうと思ったのは、西郷隆盛→相楽総三の赤報隊への関心からだった。赤報隊は中山道木曽路を進軍している。そして下諏訪で逮捕処刑されている。木曽路と言えば、「夜明け前」である。

ところが、「夜明け前」では、(読んでない人にはネタバレになってしまうが)予期せぬ展開が待っていた。主人公が「発狂」するのだ。これについては、いろいろ研究論文があった。結論は「妄想型統合失調症」となっている。精神医学的にはそうかもしれない。しかし、産業医的に見れば、明治維新による生活環境の激変(家の没落、信じていた国学の衰退など)→うつ病→アルコール依存症→アルコール性認知症(幻視あり)でもいいのではないかと思った。「座敷牢」に収容され、最後は「脚気」で亡くなっている。ウェルニッケ脳症的なものもあったのではないか?

古い時代は、何でも(一時的な精神障害でも)「発狂」「狂人」「キチガイ」で片づけられてしまい、「座敷牢」あるいは「精神病院」に放り込まれていた。現代はそんな悲惨なことはないと信じる。

歴史小説を読もうとしたのに、わたしの頭に残ったのは精神障害-精神衛生についてだった。